オーミー!フォーユー!
八幡山にそびえる豊臣秀次公ゆかりの八幡山城跡を下り、長命寺山を左手に見て通り過ぎ、たどり着いたのは堀切港。ここは琵琶湖の沖合約1.5キロの距離に浮かぶ沖島への渡船(沖島通船)の乗り場としての港です。
沖島は琵琶湖に浮かぶ最大の島で周囲は約6.8キロ。面積は約1.53平方キロメートル(東京ドーム約33個分)で270人近い島民が定住する島なのです。淡水の湖に浮かぶ島に人が定住しているというのは世界的にも珍しく、日本が誇る貴重な島でもあるのです。
JR近江八幡駅からは路線バス休暇村行き(長命寺経由)で30分あまりなのですが、堀切港からの渡船の連絡と島内の観光、帰りの時間を考えると近江八幡駅午前9時30分発のバス便が一番スムーズで便利でしょうね。
近江八幡市街から八幡山を通り過ぎ、バスに揺られ長命寺山を眺めながらの、ゆったりとしたローカルバスの旅をしばらく続けると堀切港に到着です。
そこから渡船に乗り継ぎ、港から船に揺られること約10分で沖島漁港に到着です。定員50名ほどの船内はほぼ満席の状態で、ほとんどが観光客でした。目立ったのがバス釣りがお目当ての釣り客が多かったこと。あとは数人の地元の住民とお見受けする方々。それに郵便配達員も御一人で乗船されてました。
取材当日は天候も良く、風も穏やかで、対岸の比良山系や長命寺山系の緑も映えてましたね。気軽でのどかでお手軽な船の旅を味わって、あっという間に沖島漁港着。ちなみに渡船は1日12便(日曜は10便)で片道500円です。そして、近江八幡の観光案内所で説明があったのですが、島内には雑貨屋や自動販売機はあってもコンビニの類のお店がありませんと。確かにその通りでした。必要なものは堀切港近くのコンビニを利用するか、事前に調達してください。
島の主な産業は漁業という沖島の中心地が沖島漁港。朝の漁が終わった時間帯のようで、漁船がズラリと並んで係留されていました。そして港の周囲は色とりどり、カラフルな魚網があちこちで干されていました。漁ではアユ、ワカサギ、スジエビ、ニゴロブナ、ウロリ(ゴリ)、イサザ、ビワマス、ハス、ウナギなどが獲れますが、春夏秋冬でその産物は異なります。春はコアユ、夏はビワマス、秋はワカサギ、冬はワカサギ、ホンモロコ、スジエビ、ニゴロブナというように、琵琶湖水の恵みの産物が沖島の港を彩るのです。そうして水揚げされた湖魚は滋賀県内で消費され、全国にも出荷されますが、一部は沖島でも加工され、島の名産として提供されます。ビワマスの煮付けや刺身、ホンモロコの南蛮漬けや若煮、イサザの若煮、スジエビと大豆を若煮にしたエビ豆。そしてニゴロブナを使った鮒ずし。これらの特産品は一部、沖島漁業会館内の屋台でも販売されています。
さあ、それでは島内探索です。港にあるマップを参考に港から湖畔に伸びる湖沿いの道を歩いて行きますが、なんと島には車が走ってません。住人の皆さんの主な交通手段は、写真にもちょろっと写りこんでますが、三輪自転車という後部が二輪でそこに荷物かごを据え付けた乗り物で、どなたも(特にご婦人方)この三輪自転車を操り、島内を行き来していました。この三輪自転車と舟がそれぞれのご家庭の自動車に代わる大事な交通手段なのだそうです。
湖風を浴びてテクテクと散策しますが、とにかく静かです。のんびりできますよ。
さらに島を縦断するため西へと歩きます。民家が立ち並ぶ集落を横切る路地は幅80センチほどでしょうか。限られた平地にコンパクトに建てられた家々。瀬戸内の小島を彷彿させます。路地に沿ったたたずまいは、のどかで落ち着いて、古き良き日本を想い出させてくれる風景でした。そしてゆっくりと10分ほど歩き続けて島の西側へ。目の前に現れたのは対岸の比良山系の緑。これもまた格別です。
生活感あふれる散策から島内の名所・旧跡へ。島にはコンビニはありませんが郵便局、酒屋、雑貨屋、小学校、保育所、民宿があり、歴史を誇る沖島。当然、神社・仏閣がありました。漁港から歩いてやはり10分ほど。小高い丘を登りながらやって来たのは7世紀後半から8世紀前半にかけての飛鳥時代・奈良時代のお公家さん、藤原不比等が建立したとされる、もちろん島で一番歴史ある神社、奥津島神社。712年に創立されたという説もあります。そこから石段を登り続けるとたどり着いたのは山神神社。こちらは奥津島神社よりはずっと新しく、明治時代の創建だそうです。お参りをして、そして島を一望できるこの場所で景色を楽しみましょう。琵琶湖と長命山のコントラストが実に見応えありました。このほかにもまだまだ、島には沖島小学校や弁財天、西福寺といった見どころがありますが、駆け足で沖島をご紹介いたしました。“おいつしま 守りの神やいますらん 波もさわがぬわらわえの浦” という紫式部の詠んだ歌にも登場するとされる歴史を誇る沖島。それでいてのどかな空気に包まれた島、沖島。希少で貴重な滋賀の観光スポットにぜひ一度、足をお運びください。
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