オーミー!フォーユー!
中世の五大山城のひとつとされた小谷城を巡った後は、歴史は飛んで乱世の終焉となる関ヶ原の合戦にまつわる城をご紹介いたしますが、ここまで琵琶湖周辺の城、城跡を訪ねてきましたが、山城である小谷城跡を登り歩くにあたり、改めて戦国時代に生きた武将の戦に対する覚悟と知略の凄まじさを思い知らされました。中世の技術で山の尾根、頂上の木を切り倒し、縄張りを張り、石を積み上げた過酷な作業を、よくぞやり通したものだと。乱世に生きた日本人の知略と根性には頭が下がるばかりです。
ということで、今回ご紹介いたしますのは豊臣家筆頭家臣ともいうべき知将・石田三成の居城である佐和山城です。
場所は彦根市古沢町。彦根駅の北側になります。駅前西口ロータリーには以前、彦根城の取材の折にも目にした井伊直政公に出迎えていただきました。そして、新たなモニュメントとして話題なのがこのゴールドポスト。東京五輪の競泳女子個人メドレー200メートルと400メートルで金メダルを獲得した滋賀県彦根市出身の大橋悠依選手の2冠達成したことをたたえ、設置されたものです。直政公もさぞお喜びでしょう。
さて、目指す佐和山城ですが、ここから北へ進まなければなりません。JR琵琶湖線の線路に沿って歩き、ローカル線の近江鉄道を橋の上から眺めながら線路を渡って、そこから遊歩道を歩いて約15分で東山公園に到着。かつての姿であったろう壮大な五層天守を復元した模型で佐和山城のイメージを膨らませます。
さらに進むと壮麗なお寺にたどり着きました。佐和山の麓にある彦根藩井伊家の菩提寺である曹洞宗のお寺、清凉寺です。石田三成の家老であり勇猛果敢な武将としても知られる島左近の屋敷跡だったとの説もある場所に立ち、山門をくぐり正面に本殿、右に客殿、左に座禅所が並ぶ堂々の伽藍。さすがに彦根藩主として十七代続いた井伊家墓所の残る寺院ですね。
その北側にもお寺がありました。龍潭寺、臨済宗のお寺で実はこちらも井伊家の菩提寺ということなんですが、元々は井伊家発祥の遠江、今の静岡県井伊谷にあったものを関ケ原の合戦で戦功のあった井伊直政が佐和山城主に任ぜられたことで、この場所に移築されたそうです。境内には石田三成公の銅像があります。そして竹垣の参道を進んでいくと佐和山城跡への参道入り口です。
山門をくぐり参道を進んで右に左に曲がりながら登城道入り口に辿り着きました。小谷ではいきなり“クマ出没注意!”の看板に衝撃と恐怖が走りましたが、佐和山は猿。まっ、そこは冬場なので安心だろうと自分に言い聞かせて切り通しを登り始めます。小谷山に比べれば標高は約半分の233メートル。あれほど険しくはないとたかをくくって挑んだ登山道ですが、切り通しの急なこと!!!前日の雪で斜面がぬかるみ大変です。小谷の教訓でトレッキングシューズを履いて来たことが功を奏しました、とはいえ滑るは急勾配だはで難儀な登山。15分の目安で西の丸跡を目指し登りだしましたが30分はかかりました。
佐和山城の歴史は古く、鎌倉時代の建久年間(1190年代)に砦が作られたことが始まりとされ、その後は北近江の浅井氏、そして織田信長が支配し、信長公の家臣である丹羽長秀が城主となり支配しますが、豊臣秀吉が全国統一を果たした後は、豊臣家家臣が代々城をあずかります。そして天正年間(1590年代)に豊臣政権五奉行筆頭である石田三成が入城し、北近江を領地として与えられました。三成は歴史ある佐和山を大改修し、五層の天守閣のそびえる巨大な城郭を築き上げました。この西の丸は頂上の本丸からは北西の位置に立ち、本丸の東下に二の丸、三の丸が配置され、当時の城の玄関口となる大手門は現在の登城口とは真逆の、山の東側にあったとされています。ちょうど東海道新幹線の線路側になるわけで、その辺りの平地に武家屋敷が並んでいたそうです。
西の丸跡からさらに急勾配となる登城道を登ること15分。ついに標高232メートルの山頂に位置する本丸跡へとたどり着きました。東山公園に飾られた五層天守がそびえたとされる頂上の本丸跡。ここからは西に彦根市街そして琵琶湖を一望でき、北には伊吹山を眺められます。
西の眼下に見えるのは井伊家の居城である彦根城です。豊臣政権が崩壊し、関ヶ原の合戦が行われ、そして支配者が変わると共に、この佐和山城も石田三成から徳川家の手に渡りました。近江の支配者として迎えられた井伊直政は当初、この佐和山城に入城しますが、その後は彦根に城を移し、その子、直継がこの佐和山城の築材なども利用して彦根城を築きました。そして彦根藩藩主としてこの地に栄えたのでした。
中世の山城から、近世への平山城、そして平城へと城の佇まいは変貌を遂げますが、それは同時に権力者の移行と中世社会の進化を意味するものだったのでしょう。この佐和山城跡から彦根城を眺めていると、歴史の変遷を思い知らされます。そして滋賀の歴史的な魅力の深さに納得するばかりです。
是非、びわこボートファンの皆様、ボート場に足を運ばれたなら、少しだけ時間を作って、少しだけ足を延ばして、戦国の歴史跡を巡ってみてくださいね。
お付き合いいただき、誠にありがとうございました。
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